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テキーラ(Tequila)

テキーラの歴史と語源

世界に広く知られているスピリッツの中で、もっとも個性豊かで、かつ飲む人 がロマンティックな印象を持っているのは、メキシコの特産酒テキーラであろう。 テキーラがジン、ウオツカ、ラムと並んで4大蒸留酒のひとつとして数えられ るようになったのは、1968年のメキシコ・オリンピックにより、その存在が世界 的に知られてからであるも テキーラは毒舌蘭(リュウゼツラン)というヒガンバナ科に属する多肉植物の一 種を原料とし、その茎を糖化、発酵、蒸留してつくられる。 毒舌蘭のことをメキシコではマゲイ(Maguey)あるいは植物学者リンネの命名 にしたがい、アガベ(Agave)と呼んでいる。そして毒舌蘭のうち、酒の原料とし て使われるものは、大別してアガベ・アメリカーナ(AgaveAmericana)、アガ ベ・アトロビレンス(AgaveAtrovirens)、アガベ・アズール・テキラーナ(Agave AzulTequilana)の3つの品種になる。

このうち、アガベ・アメリカーナとアガベ・アトロビレンスは、その樹液を発 酵させて、プルケ(Pulque)と称して飲まれたり、さらに蒸留して、メスカル (Mezcal、Mescal)という名で飲まれている。プルケは、トルテカ、アステカ文 明時代から土着の人々の間で飲用されてきた酒で、現在ではメキシコ・シナイ周 辺の中央高地地帯で広く飲まれている。

メスカルは、プルケ生産地より海抜が低 く、温度の高い地帯でつくられている。アカプルコなど南部イ玉ルロの太平洋岸 一帯と、メキシコ・シナイ以北の中部メキシコが主産地である。 なお、メキシコに蒸留技術が伝わったのは、16世紀にこの地に来たスペイン人 によってであるといわれている。 これらに対してテキーラは、アガベ・アズール・テキラーナという品種でつく られる。この品種は、1902年に植物学者ウェーバーによって毒舌蘭の一品種とし て認定されたもので、メキシコ第二の都市グアダラハラの近くのテキーラ町周辺 の特産品種である。

一説によると18世紀半ばごろ(スペインの統治時代)、メキシ コの西北ハリスコ州、テキーラ村にほど近いアマチタン村の地で大きな出火事が あり、焼け跡には黒焦げになったマゲイ(毒舌蘭)がゴロゴロ軸がっていた。 辺り 一面に漂う芳香を不思議に思った村人が、その一つを押し潰してみると、中からチョコレート色の汁がにじみ出し、それをそっとなめてみると上品な甘さがあっ た。マゲイの株の成分が出火事の熱で糖分に変わったのだった。 スペイン人はこ の汁を絞って発酵させ、蒸留し、無色のスピリッツをつくった。

その後、蒸留工場は良質のマゲイを求めてテキーラ村に移り、ここがメスカル の本場となる。テキーラの近代的な蒸留が始まったのは1775年である。また、メ スカルが初めて国境を越えたのは1873年といわれている。

1902年のウェーバーの 認定以降、このアガベ・アズール・テキラーナでつくるメスカルは、テキーラ(Te- quila)という名で売られることになった。 テキーラの製造方法 アガベ・アズール・テキラーナは、生育に8-10年ほどかかる。葉が青緑色を しているところからアズール(azul、スペイン語で「青い」の意味)の名がついて いる。生育したら葉をそぎ落とし、直径70-80B、重さ30-40Lになった球茎を 掘り起こす。これは、パイナップルの実を丸くして、何十倍にも大きくしたよう な形状をしている。畑から運ばれた球茎は、工場で半分に割ってから蒸気釜に入れる(昔は、石室で蒸気蒸しにしていた)。こうすると、茎に含まれているでんぷんやイヌリンのような多糖類が分解(糖化)される。

それをローラーにかけて破砕 し、圧搾し、さらに温水をかけて残った糖分を十分に絞り出す。旧来は、石臼を ロバに引かせて押し潰したものを粕ごと発酵させたが、現在は、糖汁液だけを取 り出し、タンクに移して発酵させる。 蒸留は、単式蒸留機で2回行なわれ、2回目の中曽部分だけをとって50-55度 の留酒を得る(55度以上で留酒を取ることは、法的に禁じられている)。留酒はウ オツカと同様に炭層を通して雅味を除いてから、ステンレス・タンクあるいはオ ーク樽に移す。 ステンレス・タンクに移されたものは、短期貯蔵のあと、加水して製品化され る。シャープな香りがあり、テキーラらしい特徴を一番備えている。 こうしたタ イプを現地では、テキーラ・ブランコ、英語圏では、ホワイト・テキーラと呼ん でいる。

次に、オーク樽に移されたものは、しばらくの間樽熟成のときを過ごす。2ヵ月以上樽熟成すると、ゴールド・テキーラ、別名テキーラ・レポサド(Tequila Reposado)というタイプになり、わずかに黄色みがつき、ほのかに樽香も含ん でいる。 オーク樽で1年以上熟成したものは、テキーラ・アニェホ(TequilaAhejo)と 呼ばれ、樽の香りが加わり、テキーラ独特の強靱さや鋭い芳香が薄く、まろやか な風味を特徴としている。 テキーラの法的規制 メキシコ政府の規制によると、テキーラの原料は、アガベ・アズール・テキラ ーナ以外を使用してはいけないことになっている。

もし、アガベ・アズール・テ キラーナ以外のアガベを使ったものは、メスカルという名で売らなければならな い。ただし、テキーラには、アガベ・アズール・テキラーナ由来のアルコールを 51%以上含めばよく、残り49%以下は砂糖由来のアルコールでもかまわない。し たがって、メーカーによっては、100%アガベ・アズール・テキラーナでつくっ たテキーラを出しているところもあれば、砂糖を副材料に使ったテキーラを出し ているメーカーもある。 また、1974年には、テキーラの生産地をハリスコ州全域、ミチョアカン州とナ ヤリット州の一部に限定している。そのため、これらに隣接するサカテカス、ド ゥランゴ、サン・ルイ・ポトシ各州でアガベ・アズール・テキラーナからつくる 蒸留酒は、ピノス(Pinos)という名で売られている。

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