海で生きるための            
実践気象学講座      
前号は風浪とうねりについてお伝えしたけど、今回は浅海波と深海波だ。馴じみの薄い言葉だけど、WSFerにとっては、関係の深〜い波なんだぞ!
●WSFerのための基礎講座●          
深海波と浅海波    
 

前号では風浪とうねりについて、その海域で吹いている風によって直接起こされる波を風浪、ある海域で発生した風浪が、伝搬によって他の海域に伝えられた波、これをうねりという、この両者の定義について説明した。

さらに、波高、波周期、波向、波長、波周波数、波の振幅、波速、波形のこう配および波令とはどんなものか、これら要素間の関係について、簡単な数式をつかって説明した。そして、一般にうねりは風波よりも周期が長く、波速は周期に比例するから、したがって、風浪に比べると波速も大きい。また波長も長くなるなどの基本的なことを述べた。また、台風シーズンを迎えるに当って、台風が本土に接近する前ぶれとして、土用波といわれる高波が打ちよせるが、これは、うねりが暴風域を脱して、いち早く陸岸に到達したもので波長は大きく、その速さは高速道路の車なみであることも説明した。

今回は、これも基本的事項である深海波と浅海波について、それはどのように定義されているか、これについて水粒子の運動から説明することにする。波、つまり風と重力によって起こる海面の昇降運動は、きわめて微小
な水粒子の運動によって起こる。波の運動を見ていると、波形の進行方向へ向って水面が動いているように見える。しかし、波の上の小舟や浮遊物の動きを注意して見ると、波形の進行とは別の運動をしていることが分かる。もし、海面に海流や潮汐等による流れがなければ、小舟や浮遊物は波の進行方向にはほとんど動かずに、図のように水深が深い場合には円軌道を、浅い場合には長円軌道の運動をくり返すのみである。水粒子は波形の前進につれて円運動を行ない、一回転して元の位置にもどる。しかし、水粒子はまったく動かないわけではなく、わずかではあるが前進する。この前進運動は滑り易い面上を回転する車がわずかな摩擦によって少しずつ前進するのに似ている。しかし、この前進運動は波形の進行に比べると非常に小さい。表面の水粒子は、半径が波の振幅に等しい同運動をする。この運動は 水面下の水粒子にも伝えられるが、その運動半径は、図のように深くなるにつれて急速に小さくなる。そして、波長の1/2め深さ、図でいえば五〇メートルの深さになると、表面付近に比べると雌の無視できる程度の値になる。

潜水艦がこの深さまでもぐると、海面は風によって大荒れになっていても、ほとんど動揺が失くなることはよく知られたことである。水深をdとし、これを波長Lで割った値を相対水深といい、一般にDの符号で表現する。つまりD=d/LのDで、これを相対水深といっている。そして、相対水深が1/2よりも大きい波、図でいえば、このときの波長」は100メートルだから、この場合は水深dが50メートルより深いところになるが、その波を深海抜という。また、相対水深Dが1/25より小さいところの波、下の図のような波を浅海波という。なお、浅海波と深海波の中間にあ
る波を中間彼といっている。これらの波はそれぞれ異なった性質をもち、とくにWSFにとっては、もっとも関係の深い浅海波は海底や
沿岸の地形の影響を大きく受けるため、非常に複雑な運動をする。次回から、もっとも扱い易い深海波の説明を始めていこう。
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