前回の沿岸波浪の説明は、条件が特殊だったので一般的でなかった。今回は条件を少し拡げてみる。

波の屈折の影響
前回は、波が一様に傾斜した海底をもった海岸に向って、直角に入射する場合を考えてみた。しかし、この条件というのは特殊であり一般的ではない。そこで今回は、もう少し現実的な波を考えて、海岸線に平行な等深線をもつ波に対し海岸線に斜めにくる波について考えてみよう。それには、このような波の中から、いくつかの波の峯を選びだしそれに注目してみる。これらの波の筆線は、図1が示すように水深のより浅いところを進んでいる部分は、そこより深い部分を進行している部分よりも遅い波速で進むことになる。つまり図1のように最初は直線だった波の筆線も次第に に曲り始め、海岸に近づくにつれ、等深線と平行になるようになる。このとき、波の進行方向を示す線(波内線)は、波の筆線と常に直角に交り、波の筆線が曲るにつれて一緒に屈曲していく。波両線は、光と似たような性質をもち、光がレンズの作用で集中したり、発散したりするのと同じ様に、波両線も海底の地形の作用で集中したり、発散したりする。これはWSFにとって重要なことで、一般に突出した岬では、波が集中して高くなり、逆に凹んだ砂波では発散して、波は小さくなる。このように波内線が海底の地形の作用によって曲ることを波の屈折という。そして今まで述べたよう うに屈折により波高は変化する。さらに屈折によって波高線の間隔も変化するが、これよ   り生ずる波高の増減を表わす係数を屈折係数という。なお水深の変化による波高の増減を表わす係数を浅水度係数という。これは、波の周期と波高を求める場所の水深がわかれば、求めることができる。また屈折係数は、与えられた深海波の周期と波向について、波高を求める場所までの屈折の様子、つまり波内線の形状を知れば計算できる。次に屈折の影響について述べる。図2は等深線が平行な海岸での波の屈折および屈折係数を示した図だ。図におき、横軸は前号で述べたようにh(水深)/L0(深海波波 波長)、つまり相対水深を示している。波長は深海波が海底を感じはじめてからも変化しないので、計算に用いられる。横軸は右にいくほど水深が大きくなっている。例えば肺の線は水深が波長の光で、この辺りから深海波が浅海波に変わる。同様に0・02は水深が深海波の2/100になるところで、この付近からは浅くなっても、屈折の影響は殆んどなくなる。縦軸α0は対応する深海波の波向で、曲実線の等の線は深海波の波向と浅海波の波向のなす角度、等Kr線は等屈推係数である。図から、波の入射角が36度以下の時は、波高減少は10%以下になっており、波高が50%以下になるためには、入射角が76度以下の時であることがわかる。このように波が進む方向に注意していれば、計算から出した深海波の波向が海岸付近では、どのようになるか見当がつけられる。次は波が海流によって、どのような変化を受けるか、それについて説明する。
図2等深線が平行な海岸での波の屈折および屈折係数 図1波の屈折の効果
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