セイルは 万人のために

高度化・特殊化する
トップレンジセイル。
人間不在の高速化はどうなる?


セイルの進化はウインドサーフィンのセイルか
ら始まった。420cmのマストと270cmのブームを
持つ通称"三角セイル"は1m/sの微風から15m/sを
超える強風まで乗れるオールラウンドさを持って
いたが、やはり強風でのコントロールが難しく、
エリアを落としたストームセイルやスモールセイ
ルがバリエーションとして生まれた。
ショートボードによりセイリングが始まると、
"エリアの分割"という概念が生まれる。全ての
コンディションを一枚でまかなうのではなく、複
数のセイルを使えばより強い風にも乗れることが
わかったのだ。同時にレースの世界では微風用に
大きなエリアが作られ、1985年には下は3.2Fか
ら上は7.5Fまでのラインナップの原形が完成し
た。
それからの歴史は個々のエリアのスピードアッ
プの追求だった。より少ない力でセイルを支え、
より速いスピードを生み出すことが目標とされ、
インデューサー、より硬いマスト、フレキシブル
なトップリーチが約6年の間に生み出されていっ
た。1990年代になるとセイルの耐オーバーセイル
性能が大幅に上がった。5年前には5.OFでも苦
しかった風にも6.5Fで乗れてしまう、というよ
うな現象が現れた。同時に1つ1つのセイルエリ
アのマッチングする風速域が狭まり、セイルは特
殊化する道を読む。
1992年、あまりに進化したレースセイルのアン
チテーゼとして、ややクラシックな性能を持つセ
イルがアベレージスラローマー向けに発表され、
人気を集めた。この時点で応用範囲の狭いトップ
グレードのセイルと、フトコロの深いアベレージ
スラロームセイルの2本の柱がスラロームセイル
に現れた。
物の進化は高度に特殊化することだけがベスト
なのではない。十分な技術力を生かした、セイラ
ーの使い易い方向への進化というのも存在する。
今年のセイルの流行の主流となるのはどちらにな
るかわからない。しかし全体の動きは確実に「人
間に近いセイル」に流れている。

「Windsurf CLUB 1994/4より」

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